「出会いの場でみつける隙間風」(高橋三千綱) #38

連載「恋を結ぶ往復書簡―男と女の恋し方―(https://www.gemate.co.jp/blog/correspondence/)」では、芥川賞作家である高橋三千綱先生と、インテリア・アクセサリーデザイナーであるレイネン英子氏よる、恋愛や男女の違いをテーマとした往復書簡を掲載中。今回は、高橋先生が綴ります。

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女を見る目には自信がある、とほざいていた男に限って、ペケを掴む。ペケって、×ってことなんだ。ペケを掴んだ馬鹿な男という意味だ。

「とにかく、付き合っているときは、こんなに尽くしてくれるいい女はいないと思っていたら、結婚して三月もしたらとにかくだらしない女に変身したし、料理もまともに作れない。

付き合っているときは、直前に誰かに教わっていただけだったんだ」と、男はがっかりしている。しかし、一度結婚してしまうとなかなか別れられるものではない。

ではどうするか。女を見る目の自信をいったん引っ込めて、見合いしてみることだ。

見合いをセッティングする人たちや結婚相談所にしろ親戚にしろ、相手の女のことは相当真剣に調べる。女の過去を興信所に頼んで調査する人もいる。

その上で見合いを薦めることになる。

女の場合も同じだ。

男を見る目には自信がある、といっている女に限って、どうしょうもない男を選ぶ。

挙げ句の果てには、

「この人はいまは駄目な人だけど、私がきっと素敵な人に育ててみせる」、

なんて意気込んだりする。でも、駄目な奴はダメ。

改心させてみせるなんて思い上がりもはなはだしい。いつか本人が傷心の身になる。

駄目な男の一般的な定義は、女と肉体関係を結んだあと、数週間もしないうちに、すぐに他の女に目移りするやつのことをいう。

そうでなければ、ギャンブル狂か、女に暴力を振るう内弁慶か、怠け者か、そのどれかだ。

これみんな駄目なやつ。

確かにつきあっていれば相手に対して「ムカッ」とすることはある。

男でも女でも、そういう気分になるときがある。

女が腹を立てると陰湿な手段で攻めてくる手合いは多いが、それでも男はひたすら誤解を解くか、あやまるしかない。

だが、自分を好いてくれている一番身近な女に腹をたてて暴力を振るう男は最低だ。

おれはそういう男とはつきあわない。もし友達がそういうやつだと分かったら、その時点ではっきりとおまえは最低だといってもう会うことはない。

実は26歳のとき、付き合っていた女を一度殴ったことがあった。多分、無茶なことを言って怒鳴ったおれに腹を立てた女が、夜、部屋からプイと出ていってしまったんだ。

しばらくしてから、おれは女を捜しに出た。女は暗がりを歩いていた。その姿を見てホッとした。

だが、おれが次に取った行動は自分でも意外だった。暗がりに浮かんでいる白い女の頬に向けて拳を突きだしていたんだ。

女はあっけないほど簡単に腰から地面に落ちた。

そのときおれはとんでもないことをしてしまったことに気付いた。こちらは腕を伸ばしただけでも、空手2段で剣道3段だったおれの腕力は凄く強くて、受けた女の衝撃は半端ではなかったはずだ。

だけどおれはあやまらなかった。黙って抱き起こして女と部屋に戻った。

そのとき、こいつと一緒になろう、と思った。そして、そうなった。

見合いというのは、そういう男の隙間風すら見つけだしてくることもある。いやそういう丹念な人が斡旋してくれる。ありがたいことではないか。

高橋三千綱

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