「恋に落ちる」(高橋三千綱) #41

連載「恋を結ぶ往復書簡―男と女の恋し方―」では、芥川賞作家である高橋三千綱先生と、インテリア・アクセサリーデザイナーであるレイネン英子氏よる、恋愛や男女の違いをテーマとした往復書簡を掲載中。今回は、高橋先生が綴ります。

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この恋愛書簡の第一回目に、女性の恋愛観、そして女性の年齢に対して、男の見る

目も変化すると書いた。それは35歳の女性に対する感じ方を中心にとらえたものだ

けど、それは女の反応をあらかじめ予想をしていたからなんだ。

35歳の総合職の女性の思いを大雑把にまとめてみると、

「結婚に一番必要なのは、トキメキではない。 必要なのは、一生のパートナーとし

て、自分とチームを築けるかどうかってっていうこと」

とレイネンがいっていたことになるだろうな。でも、それでは26歳だったおれの気

持はわからないし、多分、永遠に男の気持ちは理解できないだろう。その方が幸わせ

なときもある。

そんなレイネンには恋愛の心得を思い出させてあげよう。

「恋に落ちるってことは、『何故か』と問うことではないよ。それは美しいものな

んだ。だから人は恋に落ちる。それは恐怖の世界への扉をもう越えてしまっている。

そのあとにくることなんか考えたって無駄さ。それが男の人生だからさ。でも、『私

はどうなるの』、といつも最初に訊いてくる女に対して男はまったく魅力は感じない。

だから、そういう女は恋に落ちるってことへの恐怖を心配することないよ。つまり、

そういう女に魅力を感じるやつはいないということさ」

千里さんはこんなことをいっていたな。

「ストーリーとしてのキレイさやその時の風景は想い浮かぶのに、高橋先生の、そ

して奥様の気持ちと心の変遷がわからないです。 この時の高橋先生と奥様の心の変

遷が、理論武装して恋愛に言い訳してしまう私にとても必要なことである気がしてな

りません。

もし、私が奥様の立場だったらどうするかと考えてみました。 無茶なことを言われ

て怒鳴られて、訳も分からず殴られたなら

『そんな男は私からお断わりよ!!私にふさわしい人がもっと他にいるはず。あなたじゃ

なくても別にいいのよ』

と思っている姿が容易に想像できます」

そんなこと「奥様」が思っているわけないだろう。だったらとっくに遠くに行って

いる。

千里さんはこうも言っていたな。

「つまり、私がいつまでも恋愛できない理由。それは・・・

恋愛に対して受け身である→無数の男性が存在しているが、その中から男性を選べな

い→男性と出会ったとしても結婚相手として気持ちがコミットしない。なぜなら良い

男の基準が現実とのズレが生じているから。

このループに陥っているからではないかと思いました」

つまり「私はどうなるの? 私はあなたでなくてもかまわないわよ。私が結婚して

あげるのよ。あなたには私のよさが分からないの」

といいたいわけだ。

いつも恋愛の先に結婚があるわけではないが、恋愛理論武装で固まっている女に、

「恋に落ちる」

人生の意味を言ったって無駄だということだ。

大抵の男はそういう女に対して「恋に落ちる」どころか、魅力さえ感じないだろう

だろうな。

たとえ、男女の出会いの場が用意されていても、そこから先は、「個人の魅力」が

勝負なんだよ。

今のレイネンだったら。15%くらいは理解できるだろうな。それで男を知るには

充分だ。

結婚している男が何故愛人の部屋にいくのか。そこに足を入れるといつも温かい炬

燵が用意されているからなんだ。それも女の魅力のひとつさ。うーん、レイネンには

ちょっと無理だったかな。

高橋三千綱

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