「女の姿がフェイドアウトしていく」(高橋三千綱)#35

連載「恋を結ぶ往復書簡―男と女の恋し方―(https://www.gemate.co.jp/blog/correspondence/)」では、芥川賞作家である高橋三千綱先生と、インテリア・アクセサリーデザイナーであるレイネン英子氏よる、恋愛や男女の違いをテーマとした往復書簡を掲載中。今回は、高橋先生が綴ります。

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実に不思議な現象が起こる。

昨夜一緒にいた女が、数日たつとなんだか姿が薄くなり、やがては透けて透明になっていってしまう。

いわゆるフェードアウト現象だ。

その理由は自分でもよく分からないのだが、とにかく頭の中から姿が消えてしまう。

女にもそういう気持があるのだろうが、ただ、少し男とは違う感情、しこりみたいなものが残るんじゃないかな。

そのしこりの正体は各女性によって違うだろうが、元々男と一晩過ごすことをそれほど大事だと思っていないちょっと不感症気味の女だったら、

「あまり感じなかった」

と感情も、男とのセックスも、男への未練もないままに次の男に目を向けてしまうだろう。

反対に深く思い悩んで、自分のどこがいけなかったんだろうと憂鬱な日々を過ごす人もいる。俺も相談されたことがあったが、そんなことは直接一晩を過ごした男に問い質すべきであって、他人に相談すべきことじゃないといったよ。

もっともその男が俺の友人だったら、代わりに聞くこともできるけどね。

でも、男女の一晩の付き合いがどうのこうのという問題に巻き込まれるのは勘弁だね。

レイネンだったらどうするのだろう。シカトしたままどこかへ行ってしまった男に怨みを持つか、それとも不思議なやつだったで、終わらせるかな。

大分前のことだけど、18歳の女の子の友人が軽い感じで30歳過ぎの男としたことがあった。そのことを後悔して18歳の友人に嘆いたそうだ。その後のことだが、男はすぐに18歳の女の子にも誘いをかけたきたというんだな。

そんな情報はすぐに伝わる。

男が何の仕事をしていたのか忘れたけれど、その18歳の女の子が男にいった言葉がよかったね。

「そんな潜望鏡みたいなチンボコ持っているから、あたしみたいないい女とはヤレないんだよ」

千里さんの質問には、あなたに連絡してこなくなった男に、直接その理由を訊かないと分からないと答えるしかないな。

人それぞれなんだ。

別れる理由がそう簡単に出てしまったら、恋愛が面白くなくなる。

大抵の男は、まず、いい女に目をつける。

マスメディアでは美人弁護士とか、美人女医とかまず女の上に美人という冠をつけたがるのがその証拠だ。

不美人弁護士とは4流週刊誌でも絶対に書かないからな。そんな記事だれも読まな

いよ。

美人であることがいい女の条件ではないけれど、ま、てっとり早くて分かりやすいので表現してみた。

次に何度か会う内に抱いてみたい、自分のものにしてみたいと欲望を抱き出す。

そのとき、

「結婚を前提に付き合いたい」

と言って肉体関係を求めてくる男には要注意なんだ。

だが、

「結婚を前提に」

という言葉には女性には妙に魅惑的で、誠実で、自分をちゃんとした女としてみてくれている、という印象を与えてしまうものらしい。

男は、どうにかしてセックスをしてみたい。結婚云々はそのあと考えよう、と二段階でずる賢いことを考えているだけなんだけどな。

その男の真意を知れば、女はプライドをずたずたにされるだろう。

だが、女のそのプライドというやつに男が嫌気をさしたのかもしれない。

実際、女のプライドというやつは、とてつもなくひとりよがりで、全然知性的でなくて、彩色された硝子の花みたいに味気ないものなんだ。男にとってはね。

それと千里さんが一流会社の男と付き合って、ちょっといい気になっていることを、相手は嗅ぎつけたのかも知れない。

生身の自分より肩書きの方に目がいっている女、と感じたら、男は引くよ。

でもそいつの真意はそいつに尋ねるしかない。俺もヘンな男の代弁はできかねる。

高橋三千綱

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